蝉と空蝉
蝉は七日の命と聞く。
蝉の幼虫は数年を土の中で過ごすらしい。
ふと、夏休みは近くの公園で蝉採りをしていたことを思い出す。
大きな桜の木にひっついた蝉を虫アミで捕まえ糸を結びつける。蝉は凧のように上がってゆく。ただ糸の長さまでしか蝉の自由はない。
今思えばひどく酷なことをしていた。
当時は小学生だった。毎朝起きて蝉の声を聴くと捕まえに行ったものだ。
今、蝉の声が聞こえる。時計の針は午前2時を指している。
夏の夜に蝉の声。かつては朝聴いていた蝉の声が夜中にも鳴いていることを知った。
生に執着した悲痛な叫びに聞こえる。
蝉はこうして今を生きているのだ。
命ある限り彼らは叫び続ける。
彼らに比べると私は死んでいるも同然だ。
僕らはきっとなんとなく日々死んでいる。